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進水式①
【しんすいしき】

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完成した船を初めて水に浮かべる儀式を「進水式」という。進水式は船の安全を願う祈願でもある。進水式の主役は、命名する人と船体をつないでいる支綱を切断する人である。そのため、明治時代の軍艦の進水式には、天皇または名代が臨席し、海軍大臣が命名すると決められていた。支綱の切断は、普通ハンマーや小刀などが使われるが、日本独特のものに銀の斧がある。銀の斧は悪魔を祓う縁起物とされているからだ。銀の斧が初めて使われたのは、一八九一(明治二四)年の軍艦「橋立」の進水式だった。支綱が切断されると、船は静かに船台を滑って海へと向かっていく。船台には傾斜があり、その上には二本のレールが敷かれ、レールには鉄の玉が敷き詰められているから、船はスムーズに海へと進水していくのであるところで、この進水式だが、「進む」という字が使われているにもかかわらず、実際には船尾、つまりおしりのほうから進んでいく。船は構造上、船首のほうが船尾よりも細く流線型になっている。これは造波抵抗を少なくして進みやすくするためだ。この構造は、航行中には理想的なのだが、進水式となるとそうはいかない。もし、進水式で船がどんどん進んでいってしまったら困るからである。また、船尾には舵やスクリューなどがある。船首が先に船台を滑り下りたら、船尾にあるこれらが台にこすれて損傷するおそれがある。というわけで、進水式は船尾を前に進むのである。余談だが、船の大型化にともない、船台から船を滑らせて海に浮かべる昔ながらの進水式はだんだん減ってきている。現代の主流は、ドックで造船して、そこに注水して船を浮かせるというものだ。


東京書籍
「雑学大全2」
JLogosID : 14820744


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