考古学①
【こうこがく】
【日本史の雑学事典】 第10章 文化の巻 > 原始時代
■1 無念、多古人骨は旧石器時代人ではなかった…ねつ造事件から立ち直り、新たな発見へ
東北旧石器文化研究所の藤村新一副理事(当時)による前代未聞の「旧石器発見ねつ造事件」で、歴史教科書に載る前期石器時代(12万年前以前)の研究は、ほとんどすべてが壊滅してしまった。
そんなさなかの2001年5月、千葉県香取郡多古町で旧石器時代人と思われる見事な人骨が発掘された。顎や歯の特徴が旧石器時代の人間の特徴を示していたのだ。最低でも2万年前、ひょっとすると5万年前の可能性もあると発表された。
現在、最新のテクノロジーを使った調査により、これまで原人や旧人の骨だとされてきたものは、すべて否定されてしまった。唯一の旧石器時代の人骨は、沖縄県島尻郡具志頭村の港川人で、およそ1万5~8千年前だとされる。とすれば、多古人骨は、それをはるかに上回る可能性があり、考古学会はにわかに活気づいた。
多古層産化石研究会は、この骨の鑑定をアメリカの研究機関に依頼していたが、同年11月、残念ながらその結果は、旧石器時代人ではなく、わずか1500年前の古墳時代の人間の骨であることが判明した。1桁古さが違ったわけだ。
なぜ、こんな間違いが生じてしまうのだろう?
専門家は「多古町周辺には横穴古墳が多数あり、その横穴墓が崩れて、人骨が旧石器時代の地層に紛れ込んだらしい」と考える。残念な話である。
ちなみに、ねつ造事件で信用がなくなった旧石器遺跡だが、2001年11月には、ナウマン象の足跡の下から4~10万年前の可能性をもつ石器が多数出土しており、現在慎重に調査が進められている。結果が楽しみだ。
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【この辞典の書籍版説明】
「日本史の雑学事典」河合敦 |
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歴史は無限の逸話の宝箱。史実の流れに紛れて見逃しそうな話の中には、オドロキのエピソードがいっぱいある。愛あり、欲あり、謎あり、恐怖あり、理由(わけ)もあり…。学校の先生では教えてくれない日本史の奥深い楽しさ、おもしろさが思う存分楽しめる本。 |
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出版社:
日本史の雑学事典[link] |