中世の裁判
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 学校じゃ教えてくれない?! > 歴史
何か罪を犯したならば、裁判によって裁かれるのが妥当である。犯罪の事実をはっきりとさせ、きちんとした弁護を行い、公正に裁くのが当然のことだ。
しかし、これはあくまで人間に対すること。裁判は人間相手だから成立すると思っていたら、なんと中世から近世のヨーロッパでは、動物にも裁判が行われていたのである。
その形式といえば、被告は被告席に立たされ、検察官が起訴状を読み、裁判官が判決を下すという正式なもの。被告となった動物は、人間のように洋服を着せられることもあった。
例えばフランスでは、一四九四年に幼児を食い殺してしまった豚の裁判が行われた。豚は裁判所に連れて行かれ、審理を受けた上で有罪が確定。「木の股につるして絞首する」という判決を受けて、死刑執行人によって処刑された。
イタリア北部のある村では、一五一九年に収穫物を荒らしたネズミが裁判にかけられ、村からの立ち退きを言い渡されたこともあるし、一七三三年のフランスでも、大量に増えたネズミが穀物を荒らした罪で裁判にかけられた。このとき、弁護人はネズミに適切な退去地を与えるべきだと主張し、裁判所はその地区から隣の森と小川に三日以内に出ていくことという判決を下している。
ただ、相手が動物だけに、被告人が欠席のまま裁判が行われたケースも少なくない。一五二〇年、パリのサン・ミシェル教会で司教座が壊れ、ユーゴーという司教が頭を強打して発狂するという事件が発生。犯人は椅子を食い荒らした木食い虫だとして裁判にかけられたが、召喚された木食い虫が出廷せず、被告不在のままの公判となった。
このとき、弁護に立ったシャセネーという弁護士は、被告は虫だから裁判権が及ばないこと、さらに検察側が裁判手続きをきちんとしたと主張しても、被告が召喚されたことを知っていたという証拠がないから被告不在の公判は行えないこと、そして、現在教会内にいる虫が、その椅子を食い荒らした犯人だと断定できないとして無罪を主張。木食い虫はみごと無罪を勝ち取ったのである。
フランスではこうした裁判を一一二〇年から一五四一年の間に八〇回も行ったというのだから驚き。裁判費用や弁護士への謝礼は一体誰が支払っていたのやら……。
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