たそがれ
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 生活 > コトバ
夕方のぼんやりとした薄暮の時間帯を「たそがれ」あるいは「たそがれどき」と言う。最初は「たそかれ」と「か」を濁らせずに発音していた。これを漢字で書くと、「誰そ彼」。
古代日本語で「彼」は男性三人称ではなく二人称の「あなた」の意味になる。「そ」は「~ですか?」という疑問を含む言葉。だから「誰そ彼」を現代語に直訳すると「誰ですか、あなたは?」になる。
柿本人麻呂も『万葉集』で「誰彼と我をな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つわれを」と詠んでいる。このように、薄暗くなる時刻には、出会った相手の顔の見分けがつきにくく、そのため「あなたは誰ですか?」と問いかける時間帯ということで「たそがれどき」になったのだ。
特に昔は薄暮の時間帯を魔物が出歩く「逢魔がとき」とも呼んで怖れていた。そんな危険な時間帯に出会った人に対して素性を尋ねるのはごく自然なことだったのだろう。
夕刻に人の顔の見分けがつかないのと同様、明け方の薄明るくなった時間帯も人の顔の見分けがつきにくい。そのため明け方の薄明るい時間帯は「かはたれ(彼は誰)」といわれるのだ。
しかし、これほど合理的な説明がされていながらも、「誰そ彼」説は単なるコジツケという説が近年、台頭してきている。
それは古代の朝鮮半島の言葉がもとになっているとする説だ。
古代朝鮮語で「タソガレ」と発音される言葉は、そのものズバリ「夕方の薄暮の時間帯」を指すらしいのだ。
どちらの説が正しいのか、今のところ決定的な証拠はない。
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【この辞典の書籍版説明】
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