泉鏡花
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 趣味 > 書籍
泉鏡花は尾崎紅葉の弟子で、『照葉狂言』、『高野聖』『天守物語』などの幻想的な作品、『婦系図』『白鷺』など風俗性の濃い作品で知られている。
しかし、この文豪・泉鏡花、実は病的といっていいほどの潔癖症だったのだ。今も伝えられる度を越した「清潔好き」の逸話は数多い。
とにかく常軌を逸した潔癖症の鏡花でも酒を飲むときは飲む。
けれども、グラグラと煮立つほどに熱燗にした酒でなければ決して飲まなかった。
どこの誰が作ったとも知れない酒は、文字通り「煮沸消毒」しないと飲めないという訳だったらしい。彼の友人たちはこの煮詰めたような酒を「泉燗」と呼んでいた。もちろん、煮沸消毒する間にアルコールはすっかり飛んでしまい、いくら飲んでも酔えなかったという。
ほかにも鏡花の病的ともいえる潔癖症ぶりにはさまざまな笑える逸話が残されている。まず、鏡花は畳の上で挨拶するときは、決して手の平を畳につけようとはせず、必ず手の甲を下にしてお辞儀をしていた。手の平に畳の汚れがつくのは許せなくても、手の甲なら許容範囲だったようだ。
かなりの甘党としても有名だった鏡花は、いつも羊羹やまんじゅうを手離さなかったが、食べるときは、必ず同じ場所を指でつまみ、指の触れていた場所は口に入れず捨ててしまっていた、というなんとももったいない話も残っている。
こんな鏡花にとって、誰が使ったかわからない食器を使うなど耐えられるわけがない。だから、外食なんかとんでもないこと。旅行のときは、汽車の中にアルコールランプを持ち込んで、自分でうどんを作って食べていた。
今だったら防災の都合上、間髪をおかず鉄道スタッフがすっとんで来るはず。その程度のことは許されるのどかな時代だったからこそ、鏡花も不潔な現世にいながら幻想世界に翼を広げることができていたのだろうか。それとも文学界の重鎮・鏡花のすることには鉄道の車掌さんも口を挟めなかっただけなのだろうか?
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【この辞典の書籍版説明】
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