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出生前診断
【しゅっせいまえしんだん】

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(概要)
 妊婦に対し、胎児の異常や健康状態をつかむための診断。妊婦のお腹に針を刺して羊水を採取する「羊水検査」や、母体血清中のたんぱく質から診断する「血清マーカー検査」、超音波画像機器による「超音波検査」などがある。米国の検査会社「シーケノム」による新型診断は、妊婦の血液から胎児のDNAを調べ、ダウン症引き起こす染色体異常を99%の精度で突き止める。日本では2012年9月にも、国立成育医療研究センター(東京)と昭和大病院(同)が、染色体異常のリスクが高い35歳以上の妊婦を対象に共同臨床研究として導入する。妊娠10週からで費用は21万円。しかし中絶を増やす懸念があり、日本産科婦人科学会は9月1日、「安易な実施は厳に慎むべき」とする声明を発表した。

(解説)
 新型診断は従来の検査と比べ、99%の確率で染色体異常の精度の高さを把握できる以外にもメリットがある。羊水検査は診断精度が確実なものの、妊婦のお腹に針を刺すため流産のリスクが0.3%あり、安全性は新型の方が高い。血清マーカー検査や超音波検査は流産のリスクなしに異常の可能性は探れるが、診断精度に限界があった。

 しかし、安全で高確率の新型診断が導入されると、結果が判明した場合に人工中絶を促しかねない。実際、出生前診断での異常による中絶は、少子化であるにもかかわらず増加傾向だ。同学会の調べでは、1985~89年は約800件だったのが、95~99年が約3,000件で、05~09年は約6,000件と著しく増加。出産の高齢化や診断技術の向上が背景にあり、こうした状況で新型診断が導入されれば「社会に大きな混乱を招くことが懸念される」(同学会)のは確かだろう

 新型診断は、9月に導入予定の2施設を含む国内12の医療機関で研究組織を発足する。学会側は研究結果の注視と指針作りを打ち出し、国に対する法整備も求める構えだ。しかし生命観や倫理観は個人によって違う難しさもある。著名人でいえば、俳優・石田純一さんとの第一子を妊娠中のプロゴルファー東尾理子さんが6月、検査結果によるダウン症可能性ブログで告白。これに対し、ダウン症の次男を持つ元マラソンランナーの松野明美さん(現熊本市議)が「公表するようなものではない」と批判し話題になった。新型診断も、「慎重に議論を深めていきたい」(北海道新聞12年9月1日付社説)問題といえる。


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