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疾患解説

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統合失調症〈精神科〉【とうごうしっちょうしょう】
Schizophrenia

[受診科] 心療内科・精神科
受診のコツ

【概説 】
 統合失調症は、主には10代後半から20代に発症し、慢性に進行する精神疾患です。人口における生涯有病率は、1.0〜1.5%で、ざっと100人に1人くらい発病する比較的多い疾患です。遺伝的背景や原因についてはいまだに十分明らかになっていません。
 双生児研究などによれば、まったく同じ遺伝子をもつ一卵性双生児でも必ずしも両方が一致して発症するわけではありません。しかし他方で異なった遺伝子をもつ二卵性双生児よりは一致して発症する率が高いということが知られています。このようなことから、遺伝的な背景が関与し、これに環境的な要因が加わって発症するものと考えられています。何が遺伝するのかは十分明らかになっているわけではありませんが、神経の活動を他の神経に伝える、神経伝達物質に関連した仕組みの異常が遺伝するのではないかという研究が多くあります。
【症状 】
 発病のごく初期は、不機嫌、親への反抗、昼夜逆転、成績の低下、友人との交流が少なくなるなど、反抗期の状態に近い様子がみられることが多くあります。また、考えがまとまらないというように表現される訴えもみられます。これが次第に、奇異な内容を含むようになったり、まったく話さなくなったり、興奮状態になったりして病院に連れてこられるケースが多く見受けられます。
 統合失調症の症状は大別して[1]陽性症状と[2]陰性症状の2つに分けられます。陽性症状は、急性期に多くみられ、幻聴などの幻覚、妄想、自我障害などです。慢性期になっても、これらの症状が残る場合も多くあります。幻聴は実際にしていない音が聞こえるものですが、統合失調症の幻聴は人の話し声である場合が多く、幻聴同士が会話をしたり、幻聴と会話ができたりする(対話性幻聴)のが特徴です。また、妄想としては、盗聴器などが仕掛けられている、組織が自分を監視している(注察妄想)、嫌がらせをしている(被害妄想)などというものが多くみられます。また、自分の考えが他人の声として聞こえてくる(思考化声)、自分の考えが人に知られてしまう(思考伝播)、人に考えを吹き込まれる(思考吹入)、考えを吸い取られてしまう(思考奪取)、誰かに操られている(させられ体験)など、自分と他人の境界があいまいになる自我障害もよくみられます。
 陰性症状は、感情の平板化、無気力、社会的引きこもり、などの症状を示します。社会的な引きこもりは発病当初からみられることも多くあります。初期には同時に陽性症状がみられるタイプが多くみられますが、陽性症状は治療により消失したりしてあまり目立たなくなる(疎隔〈そかく〉化する)のに対し、陰性症状は一般に長く継続して残り、これが社会復帰の大きな妨げになります。
 統合失調症の特徴のひとつとして、病識の欠如があります。本人自身は病気である、あるいは異常であるとは思っておらず、これが治療に結び付ける大きな障害となります。このような場合は、不眠などの症状を治療するという形で治療に結び付けるなどの方法を取ることもありますが、うまくいかず、かなり悪化してから来院することもしばしばみられます。
【診断 】
 精神病は一般に、検査所見による異常はみられず、症状によって診断します。上記のような症状が6カ月以上持続することで診断がなされます。統合失調症の様々な分類をまとめると、その目立つ症状や経過によって下記のようになります。
 妄想型:妄想や幻聴が主体で、人格のまとまりが比較的保たれているもの
 解体型:人格のまとまりのなさが前面に出ているもの
 緊張型:混迷状態、興奮状態などが前面に出ているもの
 残遺型:陰性症状が主体でさらに疎隔化した陽性症状がみられるもの
 単純型:陰性症状主体に進行していくもの
 この中で単純型は陽性症状がほとんどなく、陰性症状である社会的引きこもりが徐々に進行していくタイプで、かなり長期にわたって病気と気づかれない場合があります。
【標準治療 】
 治療の形態(入院治療と外来治療)、治療法(薬物療法、精神療法、リハビリテーション療法)にわけて概説します。
・入院治療と外来治療
 症状が重い、興奮状態が著しい、家族との問題が大きい、病識がなく薬物をきちんと服用できないと想像される場合には、入院治療を行います。精神科の入院は本人の同意が得られない場合が多いこともあり、法律的に入院の方法が定まっています。[1]任意入院は本人の承諾の下に入院する場合です。[2]医療保護入院は精神障害があると認められ、さらに医療と保護が必要だと判断された場合、本人の同意がなくても家族などの保護者の同意の下に入院するものです。そのほか、[3]措置入院は、2名以上の精神保健指定医の診察により自傷他害のおそれがあると認められた場合、知事名で入院をさせるものです。通常は、任意入院あるいは病識が十分でない場合は医療保護入院を行います。
・薬物療法
 薬物療法の基本は抗精神病薬の投与です。従来、抗精神病薬は陽性症状への効果が主体でしたが、最近は新しい抗精神病薬が開発され、陰性症状への効果も期待できるようになりました。アリピプラゾール、ブロナンセリン、リスペリドン、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピンなどが用いられます。また、不安、緊張、興奮が強い場合には、クロルプロマジン、レボメプロマジンなどが用いられます。不眠に対しては睡眠薬が投与されます。薬物の種類はこれらのほかにも多くあり、専門医の判断で使用されます。
精神療法
 精神療法は個人精神療法と集団精神療法などにわけられます。個人精神療法は統合失調症の治療には不可欠なものです。不安のなかにいる患者を支える支持的治療を主体に行います。集団療法では、社会性を保つ効果があります。
・リハビリテーション療法
 主には、急性期を脱して社会復帰の途上にある患者さんを対象に行われます。患者同士でアパート形式の施設に住みながら社会復帰を図るグループホームや、自宅から通う形式のデイケアなどがあり、作業療法やスポーツ療法などが行われています。
【生活上の注意 】
 治療につながるケースでは、服薬が大切であることもある程度理解でき、定期的な受診を継続できますが、少なからぬケースが、服薬を中断し悪化して来院します。したがって、家族などが長期にわたって服薬や生活についてかかわっていくことも、悪化を防ぎ良い状態を維持する上で重要になってきます。
このページの執筆医師【内田直

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【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)