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疾患解説

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人格障害/パーソナリティ障害〈精神科〉【じんかくしょうがい/ぱーそなりてぃしょうがい】
Personality Disorders/Personality Disorder-PD

[受診科] 心療内科・精神科
受診のコツ

【概説 】
 基本的には感情のコントロールが悪かったり、対人関係能力が悪かったりといった、性格の偏りと考えられるもので、これを精神障害と考えるべきかどうかには、今でも疑問視する精神科医もいます。原則的には、その性格の偏りのために、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしていることが、これをただの性格の偏りと区別して精神障害とみなす条件とされていると考えてよいでしょう。
 現在、アメリカ精神医学会による診断基準DSM-IV-TR(「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第4版、解説・改訂版)では10種類の、WHOによる診断基準(ICD-10:国際疾病分類第10版、精神および行動の障害)では7種類の特定の人格障害/パーソナリティ障害が記載されており、人格障害/パーソナリティ障害は1つの疾患というより、それらを包括する用語として用いられています。人格障害全体の有病率についてのはっきりした統計はほとんどありませんが、アメリカでは、DSM-IV-TRに記載されている10種類の人格障害の有病率を合計すると、人口の10〜20%が何らかの人格障害/パーソナリティ障害をもっていることになります。
【症状 】
 人格障害/パーソナリティ障害そのものは非常に幅広い概念なので、全体の症状を一言で表すことは困難です。ただその人の属する文化から期待されるのとは著しく偏った主観的体験や行動が続いていることと、上記のようにそのために社会や職業上の機能障害が生じていることが共通の症状とされます。DSM-IV-TRでは、「奇妙で風変わりな」A群(妄想性、シゾイド、失調型人格障害)、「演技的で感情的な」B群(反社会性、境界性、演技性、自己愛性人格障害)、「不安で恐怖心の強い」C群(回避性、依存性、強迫性人格障害)の3つのカテゴリーに分けられています。
【診断 】
 DSM-IV-TRでは、人格障害/パーソナリティ障害の全般的な診断基準としては下記のものをあげています。
 [1]認知、感情性、対人関係機能、衝動の制御のうち2つ以上の領域でその人の属する文化から期待されるのとは著しく偏った主観的体験や行動が続いていることと、[2]このような主観的体験や行動のパターンに柔軟性がなく、様々な領域にまたがっていること、[3]社会や職業上の機能障害が生じていること、[4]これが長期間続き、その始まりが少なくとも青年期または小児期早期まで遡(さかのぼ)ることができること、[5]そしてこれが別の精神疾患や薬物、頭部外傷などによって起こったものでないこと、そして、10の人格障害/パーソナリティ障害には、それぞれどのような点で上記の認知、感情性、対人関係機能、衝動の制御が著しく偏っているかの症状が列記されており、それを満たせば、それぞれの人格障害/パーソナリティ障害の診断を受けることになります。
【標準治療 】
 基本的にこの障害群は人格の偏りでもあるため、治療は困難です。人間関係の改善のためにグループ精神療法が、性格の育て直しや自己洞察のために精神分析的精神療法が、行動を変えていくために行動療法やリミット・セッティングが、ものの考え方を変えるために認知療法が行われますが、人によっては大変有効ですが、有効でない人も少なくありません。
 感情のコントロールの悪さや気分の変動や不安に対して、対症的に薬物療法が用いられることは少なくありません。近年になって、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)というシナプス内のセロトニン濃度を選択的にあげる薬が使用可能になりました。一部の人格障害/パーソナリティ障害の患者さんに劇的に効くことがわかり、一部の人格障害/パーソナリティ障害は神経伝達物質の異常が関与していると考えられるようになりましたが、これについても効く人がいる(それほど少なくありませんが)というレベルで、決定的なものとはいえません。
【予後 】
 定義上、人格障害/パーソナリティ障害というのは、非適応的、あるいは偏った形で安定した主観や行動のパターンであるので、ずっと続くものということになります。ただ、いくつかの型の人格障害/パーソナリティ障害(とくに、反社会性と境界性人格障害)は加齢に伴い症状が目立たなくなることはあります。
 一方、年をとっても大して変わらないものもあります(強迫性および失調型人格障害)。標準治療の項で述べた精神療法や薬物療法がうまくいって、社会適応がはるかによくなることもそれほどめずらしいことではありません。いずれにせよ、今後さらなる治療の進歩が望まれる精神障害といえるでしょう。
【生活上の注意 】
 一般的なルールはありませんが、病気だから、病的な性格だからと諦めずに、守れるかぎり社会のルールに従うこと、従わせることが社会復帰や社会適応の第一歩となります。最近はこのように「型からはいる」行動療法的アプローチが重視されています。
このページの執筆医師【和田秀樹

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【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)