全辞書一括検索 JLogos

疾患解説

トップ各診療科から検索消化器

膵ガン【すいがん】
Cancer Of Pancreas

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 膵ガンは近年増加傾向にあり、平成22(2010)年の厚生労働省人口動態統計によると、膵ガンの死亡数は28,017人であり、死亡率では人口10万人に対して22.2人と報告されています。日本人のガンによる死因の7.9%を占めており、肺ガン、胃ガン、大腸ガン、肝ガンに次いで第5位です。女性よりも男性に多く、60〜70歳代に好発しますが、最近では女性が増えています。年間発生者数と年間死亡者数がほぼ等しく、難治性のガンの代表です。
 発生原因はよくわかっていませんが、喫煙、肥満、慢性膵炎、糖尿病との関連が報告されています。外(消化液)分泌腺組織由来の膵ガンには膵管上皮から発生する膵管ガンと腺房細胞から発生する腺房細胞ガンがありますが、ほとんど(95%以上)は膵管ガンですので、ここでは主に通常型膵管ガンについて述べます。膵臓を3等分し十二指腸側から膵頭部、膵体部、膵尾部といいますが、多く(70〜80%)は膵頭部に発生します。
【症状 】
 極めて早期には症状はみられません。初期症状は上腹部の不定愁訴(ふていしゅうそ)で、膵ガンを第一に疑うことは困難です。ガンの進行とともに、上腹部痛(背部痛)、腹部腫瘤(しゅりゅう)、体重減少などが出現します。膵炎の症状が現れたり、糖尿病が急激に悪化することもあります。ガンが胆管に浸潤すると黄疸(おうだん)が出現しますが、この時点で発見されることも多いです。末期には腹水が出現します。
【診断 】
 血液中の腫瘍(しゅよう)マーカーとしてCEACA19-9、エラスターゼ1、Span-1、DUPAN-2などがあります。画像診断では、スクリーニング検査として簡便、無侵襲である腹部超音波検査があげられます。精密検査には第一に、マルチスライスCT(MD-CT)があり、必要に応じて、磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、陽電子放射断層撮影(FDG-PET)を組み合わせて行います。
【標準治療 】
 唯一の根治可能な治療法は手術ですが、膵ガンは早期発見が困難で、容易に他組織に進展するため、切除率は約40%にとどまり、また、根治切除が施行されたとしても5年生存率は10%程度です。膵頭部ガンに対しては膵頭十二指腸切除が、膵体尾部ガンに対しては膵体尾部切除が、ガンが膵全体に及ぶ場合には膵全摘が行われます。膵切除は腹部外科のうちで最も難易度が高い手術の1つであり、症例数の多い専門病院(high volume center)で行うべきです。high volume centerとは、膵頭十二指腸切除を年間20例以上施行している施設と分類されています。非手術例に対しては、化学療法、放射線療法などが行われています。(全身)化学療法はゲムシタビン(gemcitabin:GEM)単剤治療が世界的に標準的治療として行われています。日本国内では、TS-1(S-1)という経口抗ガン剤が保険適応内で投与可能であり、ゲムシタビンとほぼ同等の効果が報告されています。
 放射線療法は局所制御に効果があり、疼痛(とうつう)除去などの改善がみられます。治療の進歩にもかかわらず、膵ガンの治療成績はいまだ満足すべきものではなく、実際の現場ではこれらの治療法が適宜組み合わせられています。
【生活上の注意 】
 現在までのところ特別な予防法はありません。一般に予後不良な膵ガンも病期I(5%)であれば約60%の5年生存が期待できるので、早期発見、早期治療がとくに重要です。中年以降であれば定期的に検診などでチェックするようにしましょう。
このページの執筆医師【名取健

【関連コラム】
内視鏡(カメラ/ファイバースコープ)
放射線検査
PET検査(ペット:ポジトロン放出断層撮影法)

【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)