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疾患解説

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慢性膵炎【まんせいすいえん】
Chronic Pancreatitis

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 慢性の炎症により膵組織が線維化を来し、委縮していきます。炎症により膵臓の細胞が壊れて数が減っていくのと、その修復過程で線維化が起きることが原因と思われます。膵管が狭窄・閉塞し、膵液の組成が変化して結石を作りやすくなります。炎症そのもの、結石嵌頓や膵管閉塞により高くなった膵管内圧などにより疼痛が発生します。また、膵管破綻を契機に膵液の貯留による仮性嚢胞の形成や、膵液貯留が腹腔内のみならず胸腔にも達することがあります。膵液の消化作用により、さまざまな病態が起こりえます。
 さらに、急性増悪と呼ばれる急性膵炎を起こすことがしばしばあり、病期は代償期と呼ばれる内外分泌機能が保たれている時期と、非代償期と呼ばれる機能が廃絶した時期とに分けられます。
 最近では「早期慢性膵炎」という概念が提唱され、ごく軽症だが症状を伴う症例が定義されるようになりました。これらの長期経過はまだよくわかっていません。慢性膵炎は膵がんをはじめ、悪性腫瘍の合併が多いことで知られています。
【症状 】
 腹痛、背部痛が主な症状で急性膵炎(急性増悪)を起こすこともあります。膵臓の働きの一つである内分泌機能(血中へのホルモン分泌)が低下すると、インスリン分泌が低下して糖尿病になります。外分泌機能(消化管へ消化液分泌)が低下すると脂肪の代謝ができず吸収できなくなるので、やせてくるのと便中脂肪が増加し、やや白っぽくて水に浮くような軟便・下痢の脂肪便が出現します。
 非代償期には糖尿病、脂肪便が出現してきますが、逆に腹痛や急性増悪はなくなってきます。正常膵組織の減少によるものと考えられています。
 また、膵内胆管が閉塞すると黄疸が出現し、炎症や漏出した膵液の作用、膵液が貯留した仮性嚢胞などによる影響で消化管、脈管などが閉塞することもあります。
【診断 】
 アミラーゼやリパーゼといった膵酵素は、膵組織が破壊されて逸脱してくるものを見ているので、急性増悪の診断以外はあまり役に立ちません。ただし、アミラーゼやリパーゼの値が正常値よりも低値を示すのは、膵萎縮の進行、すなわち正常膵組織の減少を意味します。これは、膵が委縮すると、通常壊れて再生する細胞の量が減ってくるので、細胞が壊れて出てくる逸脱酵素であるアミラーゼ等も低値になるためです。
 正常な膵臓は2cmくらいの厚みがある臓器で、膵組織の内部に2mm程度の太さの主膵管が認められます。慢性膵炎の診断は画像診断が基本で、CTやMRCP(MR胆管膵管撮影)で拡張、蛇行した主膵管内に膵石を認め、膵組織が薄くなって管ばかりが目立つような所見が進行した慢性膵炎の典型像です。早期では膵管の変化や膵組織内の小石灰化のみという症例もあります。
 最近では超音波内視鏡(EUS)で、膵組織の変化を捉えて早期慢性膵炎を診断できるようになりました。機能検査に関して、膵外分泌能の評価は尿検査であるPFD試験(膵外分泌機能検査)が行われます。内分泌機能に関してはインスリン測定などの糖尿病の評価になります。
【標準治療 】
 アルコールの過飲が最多の原因なので、禁酒が強く勧められます。アルコールが原因でない方でも、飲酒はお勧めできません。
 基本的にはタンパク分解酵素阻害剤投与で急性増悪・疼痛の予防を行います。外分泌不全による脂肪の消化、吸収障害に対して膵酵素の補充療法とプロトンポンプ阻害剤を服用します。また適宜、疼痛対策として鎮痛剤を使用します。さらに、種々の合併症が起きるのでその対処も重要です。
 膵石の治療はESWL(体外式衝撃波結石破砕療法)、胆管閉塞で黄疸が出れば内視鏡的胆管ステント留置術、有症状の仮性嚢胞ができれば内視鏡・IVR(インターベンショナル・ラジオロジー:画像下治療)・手術などによるドレナージ術などを行うので、専門知識と手技ができる施設でないと対処は難しいです。
●標準治療例
 [1]フォイパン  100mg  1回100mg  1日300mg経口投与(発作時600mgに増量)
 [2]リパクレオン  100mg  1回400mg  1日12,000mg経口投与
 [3]パリエット  10mg  1日1回経口投与
【予後 】
 禁酒が原則、筆者らの施設では禁酒のできない患者さんの治療はお断りしています。
 代償期の場合は、特に生活の制限はありませんが、やはり糖尿病になりやすいので過剰な糖分摂取は避けるべきです。また高脂肪食の摂取が急性増悪、疼痛を引き起こすことがあるので、極力避けます。
 非代償期になると脂肪便や糖尿病など、内外分泌不全症状が増えてくる代わりに、疼痛や急性増悪は少なくなってきます。この時期は脂肪制限を行うべきではありますが、やせてくる方も多いので膵酵素の補充をしっかり行った上で摂取させるべきです。
【生活上の注意 】
 慢性膵炎自体の予後は良好ですが、患者の予後は種々の合併症によります。慢性膵炎に伴う合併症である急性増悪の重症化、仮性嚢胞、膵管破綻、仮性動脈瘤破裂などと、糖尿病、アルコール性肝硬変、膵がんをはじめとする悪性腫瘍が併発してきます。
 定期的な受診と検診で早期発見に努めるべきですが、荒廃した膵の中にできた小さい膵がんを診断するのは現在の医療技術では困難であり、画像診断技術のさらなる進歩が必要です。
このページの執筆医師【伊佐山浩通

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【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)