全辞書一括検索 JLogos

疾患解説

トップ各診療科から検索消化器

胆石症【たんせきしょう】
Gallstone

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 肝臓から分泌された胆汁(たんじゅう)は、胆管と呼ばれる管を通って腸へ運ばれます。胆嚢(たんのう)は、この途中に付属している袋状の臓器で、胆汁を一時的に溜めて濃縮しておき、口から食べた食物が十二指腸へ送られたとき、これを感知して収縮し胆汁を腸へ分泌します。胆汁は、脂肪の消化を助けています。
 胆石症とは、この胆汁が存在している胆嚢や胆管にできる石を総称していい、それぞれ部位により、胆嚢結石症、総胆管結石症、肝内結石症と呼ばれます。一般には胆嚢結石が多いため、胆石症といえば胆嚢結石症をさすことも多くあります。胆石は、主たる成分により、コレステロール系石、色素系石などがありますが、石ができる成因はともかく、胆嚢や総胆管結石では、種類によって治療法が大きく変わることはありません。
【症状 】
 胆石があっても症状のない人も多く、胆石を持っていることを知らずに一生を過ごす方もいます。最近は健康診断や定期検診の制度が整い、またお腹の断面を見ることのできる各種画像診断法が発達しましたので、偶然に胆石と診断される場合も多いでしょう。
 胆嚢結石の典型的な症状は、夜半から明け方にかけて起こる、強い上腹部の痛みです。かなりの激痛のため、胆嚢疝痛(せんつう)と呼ばれています。痛みの部位は、胆嚢が存在する右季肋部(鳩尾〈きゅうび:みぞおち部分〉より右側の肋骨の下の部位)のほか、心窩(しんか)部(鳩尾)に痛みを感じる場合があります。これは胆嚢の痛みを感じる神経がまず心窩部へ向かい、その後、脊髄を通って脳に達するためです。いわゆる胃けいれんと診断される患者さんのなかに、胆石による疝痛の患者さんがかなり混じっています。
 胆嚢疝痛は、結石が胆嚢の入り口付近に嵌頓(かんとん:はまりこんで動かない状態)することで起こります。食事によって胆嚢は収縮しようとしますが、結石の嵌頓により胆汁が胆嚢から出られない状況になります。それでも胆嚢は縮もうとしてけいれんに似た痛みが起こるわけです。脂っこい食事で胆嚢はより強く収縮しますが、夕食にこのような食事を摂ることが多いため、夜間の発作が典型的となります。食物が消化されて十二指腸から小腸へ移動すると胆嚢が弛緩(しかん)して嵌頓がはずれ、明け方頃には自然に痛みがとれてきます。このほか、胆石は硬いため、胆嚢の壁を通して腹膜を刺激し、右季肋部の鈍い痛みや重さを感じる人もいます。これは仕事で疲れたときなどに多いようです。
 胆管結石も、普段は無症状です。肝内にある場合には、腹部や肩の痛みに加え、細菌感染があれば発熱がみられます。総胆管結石では、結石が総胆管末端に嵌頓することで症状がでます。胆管は胆汁流出のメインルートですので、これが障害されることで上記の痛みの他、発熱、黄疸(おうだん)や褐色尿がみられます。さらに重症例では胆管全体が化膿してしまう急性化膿性胆管炎という病態が起こり、悪寒戦慄、ショックなどを伴うことがあり、その場合、ことに80歳を超える高齢者では、命取りともなりかねません。総胆管結石の嵌頓が緩く起こっている場合には、上腹部の鈍痛や食事が十分とれないなど、はっきり胆石の痛みと特定できない症状のこともあります。
図:胆嚢入り口付近と総胆管末端への嵌頓
【診断 】
 胆嚢結石は、ごく小さな結石を除けば、超音波検査でほとんどが診断できます。これにCT検査を加えることでほぼ100%の診断ができます。見落としはまずありません。
 一方、これらの検査では総胆管結石の診断率は70%ほどです。これを補うために、経静脈的胆道造影(DIC)、MRIを用いた胆管膵管撮影(MRCP)を加えることで、ほぼ100%の診断が得られます。さらに精査目的で、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的胆管膵管造影(ERCP)や経皮経肝胆管造影(PTC)などの造影検査が行われます。
 血液検査に異常がでるのは、主として発作時です。胆嚢結石では、炎症のため白血球や炎症反応であるCRPが上昇します。胆嚢炎の症状が強く胆管に影響が及んだり、総胆管結石症では、肝胆道系の酵素(ASTALT、γ-GTP、ALP)が上昇し、胆汁がうっ滞して血液中に逆流するため血清ビリルビンが上昇し黄疸がみられます。
 胆石症の痛みと鑑別すべき疾患としては、胃・十二指腸潰瘍、急性胃炎、急性膵炎、腎盂腎炎、尿管結石などがあります。また、心筋梗塞や高齢者の肺炎では症状を上腹部の痛みとして感じることがあるので、胆石発作と間違えないよう注意が必要です。胆嚢ガンが胆嚢の入り口付近に発生すると、胆石発作と同じ症状をきたしますので、胆嚢ガンの存在は常に心にとめておかねばなりません。
【標準治療 】
 治療が必要となるのは、胆石による症状がみられる場合です。胆石による疝痛(せんつう)発作は激痛ですが、通常は腸などのけいれんを緩める鎮痙剤の筋肉注射や点滴など外来治療で軽快します。それでも発熱や痛みが持続する場合は、急性胆嚢炎の合併が疑われます。総胆管結石では、黄疸を伴っていると、食事による胆汁分泌刺激を避けるため絶食が必要で、入院治療となります。発作が鎮まった間歇(かんけつ)期には、通常治療はしませんが、ウルソの内服が発作予防に効果があることが証明されています。胆嚢ガンが疑われたり、胆嚢内腔が結石で充満したりしているような例では胆嚢ガン予防のため、手術的治療が勧められます。
 胆嚢結石の治療には次のようなものがあります。
1)腹腔鏡下胆嚢摘出術
 胆石発生の場である胆嚢を除去する手術療法は、最も根治的であり、短期間で治療が完了するため、現在では胆石症で一番多く行われている治療法となっています。全身麻酔のもと、お腹に約1cmの穴を3、4カ所開けて、ここからお腹の中をのぞくカメラや手術器具を挿入して胆嚢を摘出する方法です。お腹につく傷が小さいため術後の痛みが軽く、それだけ術後の回復が早く、入院期間も短くてすみます。最近では、お臍(へそ)に2〜3cmの傷を1カ所設け、ここからカメラと手術器具を挿入して行う、単孔式手術も普及しており、より侵襲の少ない方法が追求されています。高度の慢性胆嚢炎、上腹部の手術後で周囲との癒着が高度の場合は、腹腔鏡による方法が困難なことがあり、開腹手術が選択されます。妊婦に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術も行われますが、胎児への影響が皆無でないことから、妊婦では行わないほうが安全です。
 総胆管結石に対しても、腹腔鏡下に胆管を切開するなどして、結石を摘出することが可能です。結石の数が5、6個以上あったり、総胆管末端に嵌頓したりしている場合は、腹腔鏡下の手技では困難になります。
2)体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL)
 結石部に収束させた強力超音波を数千回発射して、胆石を破砕する方法です。2cmを超える大きな結石やカルシウム分に富む結石ではほとんど効果がありません。破砕された結石が胆嚢から胆管へ出てさらに腸へ流れる必要があり、さらに胆石溶解療法が併用されますので、胆石が胆嚢の入り口に嵌頓したままの状態の人は適応となりません。
3)結石溶解療法
 コレステロール系石が対象となります。ウルソなどによる薬物療法で胆石を溶かす方法です。単独でも用いられますが、多くは破砕療法と併用されます。効果が高いのは、コレステロールのみからなる純コレステロール石や、胆嚢内に浮くような軽い結石です。薬は最低でも6カ月の内服が必要です。それでも効果がみられるのは、せいぜい10%ほどです。一度溶けたようにみえても、5年で4割程度の人が再発します。
4)内視鏡的総胆管結石除去術
 内視鏡を用い十二指腸から総胆管へアプローチして、ワイヤーなどを用いて結石を除去します。腹腔鏡下胆嚢摘出術と組み合わされたり、高齢者で総胆管にのみ結石がある場合に行われます。
【予後 】
 無症状の胆石で、将来痛みが出てくるのは4割ほどです。痛みが出た時点で、治療を考えれば十分です。その間は、胆嚢ガンの発生に注意すべきで、とくに60歳以上では定期的検査が欠かせません。胆嚢結石は胆嚢を摘出してしまえば治療が完結します。総胆管結石や胆嚢の摘出後、ときに総胆管結石の遺残や再発がみられます。
【生活上の注意 】
 検診などで偶然見つかった胆石など症状のない場合は、生活に制限はありません。定期的な検診を受け、胆嚢壁に変化がないことを確認します。症状があるときは、脂っこい食事は発作を誘発しますので、これらを過度にとらないようにします。また、胆摘後は、概説の項で述べた胆汁濃縮機能がなくなるため、1年間ほどは脂っこい食事で便が軟らかくなる方がいます。
このページの執筆医師【万代恭嗣

【関連コラム】
内視鏡(カメラ/ファイバースコープ)
腹腔鏡下手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術〈Lap-C、ラパコレ〉)

【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)