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疾患解説

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肝ガン【かんがん】
Cancer Of Liver

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 肝臓にできるガンを原発性肝ガンといい、その95%が肝細胞由来の肝細胞ガンで、肝ガンといえば肝細胞ガンを指すことが多いようです。この他の原発性肝ガンとして胆管細胞ガン(約3%)があります。肝臓以外の臓器のガンから肝臓に転移したものを転移性肝ガンといいます。大腸ガン、胃ガン、膵(すい)ガン、乳ガン、腎ガンなどいろいろな臓器のガンが肝臓に転移します。
 肝細胞ガンは日本を含めたアジア・アフリカに多く、欧米には少ない病気です。男女比は7:3で男性に多い傾向にあります。わが国の肝ガン死亡者は年間3万人といわれ、男性のガン死因の第4位、女性では第5位です(2009年統計、出所:国立がん研究センターがん対策情報センター)。とくに男性で増加傾向にあります。
 病因としてはC型肝炎(70%)、B型肝炎(15%)がほとんどで、肝炎ウイルスが関与していないのはごく一部にすぎません。中国などのアジアの他の国ではB型肝炎が多いといわれています。肝炎による慢性の肝障害(肝硬変、慢性肝炎あわせて75%)から発生するため、肝機能に応じた治療法が選択されます。
【症状 】
 かつては進行してから発見されたため、黄疸(おうだん)、腹水、腹痛、発熱などの古典的な症状を示すことが多かったのですが、最近は肝炎、肝硬変で通院中の定期的なチェックで、無症状のうちに発見されることが多くなりました。肝ガンはC型、B型肝炎というリスクファクターがはっきりわかっているので、重点的なスクリーニングが可能です。まれに肝ガンは腹腔(ふくくう)内に破裂し、腹痛、貧血、ショックなどで発見されることもあります。
【診断 】
 腫瘍マーカーではαフェトプロテイン(AFP)が最も有名で、肝細胞ガンの70〜90%で上昇します。この他、PIVKA-II(ピブカツー)というマーカーはAFPに比べて陽性率は低いものの特異性にすぐれているといわれています。最近、AFPのL3分画が注目され、AFPの上昇が軽度でも、このL3分画の割合が高ければ肝ガンの可能性が高いといわれています。画像診断では超音波検査が最も手軽で、C型・B型肝炎、肝硬変のハイリスクの患者さんでは定期的(たとえば3カ月に1回)に行われ、早期発見に威力を発揮します。この他CT、MRIや血管造影、血管造影CT(Angio-CT)などが精密検査として行われます。
【標準治療 】
 手術が最も根治的な治療法ですが、肝機能や病変の大きさや数、位置によって手術ができないことがあります。
 手術としては系統的切除(区域切除、亜区域切除など)が基本で、根治手術例の5年生存率は60%前後と良好です。ただし、残肝再発は多く、3年で60%ともいわれ、B型、C型肝炎・肝硬変では第二、第三の発ガンが多いためと考えられています。
 肝動脈塞栓術(TAE)は肝ガンを養う肝動脈を抗ガン剤を入れながらつまらせる治療法で、5年生存率20〜30%といわれています。
 エタノール注入療法(PEIT)は細い針を病変に刺して純エタノールを注入する治療法で、直径3cm以下で3個以下の病変が主に対象となります。2000年以降、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術(radiofrequency ablation:RFA)という治療法が開発され、最近はこちらが主流です。PEITに比べ少ない治療回数で効果があるといわれています。
●標準治療例
1)手術
 腹水がなく、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以下の症例が対象となり、ICG(インドシアニングリーン)負荷試験の値によって、切除できる範囲を決めます。例えば、ICG負荷試験がまったく正常(10%以下)な肝臓では、肝全体の約3分の2までの切除が可能ですし、この値が10〜19%の軽度障害例では約3分の1までの切除が可能です。また、30%以上の肝機能不良例ではごく小範囲の部分切除しか行えません。これらの基準を守ることで、肝切除による死亡率は、専門施設では1%以下になっています。手術後の入院期間は2〜3週です。病変の数や大きさ、位置などでこの基準内の切除で腫瘍(しゅよう)が取りきれない場合は手術以外の治療法を選択します。
2)肝動脈塞栓術(TAE)
 基本的には手術のできない患者さんが対象となります。ただし、肝機能が非常に悪い時や、ガンによって門脈本幹が塞がっている場合は行うことができません。また、腫瘍血管が乏しい高分化型肝ガンなどでは効果があまり期待できません。
3)エタノール注入療法(PEIT)
 大きさが3cm以下の小型の肝ガンで3個以下のものがよい適応とされています。入院して週に1〜2回、トータルで数回行います(局所麻酔)。超音波で病変を確認し、細い針で刺してエタノールを2〜5cc程度注入します。
4)ラジオ波焼灼術
 対象はPEITとほぼ同様です。局所麻酔または全身麻酔をして特殊な針を病変に刺し、ラジオ波(電子レンジに使うマイクロ波よりも周波数の低い電磁波)で加温して腫瘍を凝固させます。
【予後/生活上の注意 】
 肝機能が中等度以上に悪くならないかぎり通常の生活が可能です。治療後も再発が多く、C型・B型肝炎、肝硬変では常に第二、第三の発ガンのリスクがあることを理解して定期検査を怠らないことが重要です。お酒は肝機能をさらに悪化させるため禁物です。
このページの執筆医師【國土典宏

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【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)