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疾患解説

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薬物性肝障害【やくぶつせいかんしょうがい】
Drug-induced Liver Injury

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 肝臓は主な働きの1つに薬物代謝があります。門脈(もんみゃく)あるいは肝動脈より運ばれてきた薬物に対しいわゆる解毒を営み、これら代謝産物を体外に排出します。しかし、これらの代謝過程において肝自体が障害を受けることがあるのです。
 薬物性肝障害は中毒性肝障害と薬物アレルギー性肝炎に分けられます。中毒性肝障害は薬物または、その代謝産物の直接的な肝毒性によって起こり、用量依存性(薬の量が増えれば増えるほど障害が起こる可能性が増すということ)です。一方、薬物アレルギー性肝炎は個体の特異体質により生じ、用量非依存性(薬の量とは関係なく起こる)です。最近の薬物性肝障害の大部分は、薬物アレルギーによると考えられています。発症のしかたにより急性と慢性に分類され、急性型は肝細胞障害型、胆汁うっ滞型、混合型に分けられます。原因薬剤としては、抗生物質、抗悪性腫瘍(しゅよう)剤、解熱鎮痛薬、精神神経用薬などの頻度が高いようです。しかし、どのような薬物でも薬物アレルギー性肝炎を起こしうるので、上記以外の薬でも注意は必要です。
【症状 】
 薬物性肝障害の80〜90%は、服用後60日以内に発症しています。初発症状としては、肝炎型では食欲不振、発熱、発疹を訴え、胆汁うっ滞型は黄疸(おうだん)、そう痒(よう)感(かゆみ)、褐色尿(黄色の程度が濃くなる)を主訴とすることが多いようです。
【診断 】
 服用中もしくは最近服用した薬剤の有無を確認することがまず第一となります。肝細胞障害型では、そう痒感を伴うことは少なく、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)(GOT)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)(GPT)の優位な上昇を認めます。また、胆汁うっ滞型では、そう痒を伴うことが多く、黄疸・胆道系酵素(γ-GTP、ALPLAP)の優位な上昇を認めます。肝機能異常の他には、末梢血液像において好酸球(こうさんきゅう)数の増加が特徴となります。薬剤が原因である疑いが強くなれば、薬剤感受性試験を行い、原因薬剤の確定を行います。
【標準治療 】
 治療の原則は起因薬物を速やかに中止することですので、できるだけ早期に診断を行うことが肝要です。
肝細胞障害型
 薬剤の中止により急速に改善を示すことが多く、ASTALTの改善が遅い場合は肝庇護(ひご)剤である強力ネオミノファーゲンCの静脈内注射をすることもあります。まれにですが、肝炎が劇症化(げきしょうか)する場合もあります。
胆汁うっ滞型
 肝細胞障害型に比べ薬剤中止後も経過が長びく例が多く、慢性に移行することがありますが、劇症化することはほとんどありません。胆汁の排泄を促す目的で、ウルソデオキシコール酸、副腎皮質ステロイド剤が使われることがあります。高度の場合、血漿交換療法が必要になることもあります。
【生活上の注意/予防 】
・平素より安易に薬物を服用しない習慣を身につけましょう。
・やむをえず薬を服用する場合は、定期的に副作用のチェックを受けましょう(病院で薬だけもらい続けることは恐ろしいことです。診察は受けるように!)。
・過去に薬物アレルギーによる肝炎を起こしたことがある人は、その薬物名をしっかり記憶し、医療機関を訪れる時に必ず申し出て下さい。
このページの執筆医師【寺下史朗

【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)