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疾患解説

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アルコール性肝障害【あるこーるせいかんしょうがい】
Alcoholic Liver Disease

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 アルコール性肝障害とは過剰な飲酒に基づく肝障害のことをいいます。アルコールは肝臓に対して直接的に細胞障害作用と線維(せんい)増生(ぞうせい)作用をもっており、加えて栄養因子、免疫異常および遺伝的素因などが肝障害の発現に影響を与えます。
 アルコール性肝障害の発生は積算飲酒量が多くなるほど高くなります。目安としては、日本酒換算で3合/日、5年以上で認められるようです。しかし、アルコール性肝障害の発生と病態には個人差や性差がみられ、女性では男性の約2/3の積算飲酒量で肝硬変が認められるようです。
 最近、アルコール消費量の増加に伴ってアルコール性肝障害の発症頻度も増加してきています。全肝臓疾患中におけるアルコール性肝障害の占める率は約10%もあるようです。主な病型の分類としては、[1]アルコール性脂肪肝、[2]アルコール性肝線維症、[3]アルコール性肝炎、[4]アルコール性肝硬変(かんこうへん)があります。
【症状 】
1)アルコール性脂肪肝
 若年者に多く、比較的少ない飲酒量でも発症します。自他覚症状には、それほど特徴的なものはなく(自覚症状はないことが多く、あっても軽度の倦怠感ぐらい)、肝機能検査では軽度の異常を示すものが約半数に認められます。他の病型に比べても低い値を示します(「脂肪肝」参照)。
2)アルコール性肝線維症
 臨床症状および肝機能検査では脂肪肝より異常を示す頻度は高いようですが、これも、あっても倦怠感ぐらいでしょうか。
3)アルコール性肝炎
 大酒家が、大量飲酒を契機に発症する急性肝細胞壊死による急性肝炎に似た病態をいいます。症状のほとんどみられない場合も少なくないようですが、腹痛、黄疸(おうだん)、発熱、脳症(のうしょう)などに加え、重症型では多臓器不全を合併し約40%が死亡するといわれています。他の病型との比較では、アルコール性肝炎は比較的若年で、短期間に大量の飲酒をしている例に多く、臨床症状の発現頻度も高く、とくに黄疸の強い場合が多いようです。
4)アルコール性肝硬変
 他の原因による肝硬変に比較して、全身倦怠感、食欲不振、下痢を認める傾向が多く、これらは過剰の飲酒に関連していると考えられています。他覚症状としては、くも状血管拡張と肝腫大(かんしゅだい)を認めることが多い以外は、他の原因による肝硬変と変わりありません。
【診断 】
 大酒家の肝障害は必ずしもアルコールに起因しているとは限りません。しかし、飲酒量に相関していることはまず間違いないので、アルコールの飲酒歴が、診断の大きな手助けとなります。例えばこんなことがあります。「お酒はどうですか?」と訊ねると「お酒はあまり好きではありません」との返事。しかしどうみても飲みそうだったので「本当にアルコールはやらないのですか?」と聞き直すと「ウィスキーは結構飲みますよ」と。《お酒》とは《アルコール》のつもりでいったのですが……。その後は、《アルコール》というように心がけています。
 一概にはいえませんが、アルコール性肝障害を強く疑う所見を以下に示します。
 [1]肝腫大の程度が他の原因による場合よりも強い(触診、腹部CT、腹部超音波検査)。
 [2]血液検査:γ(ガンマ)-GTP値の上昇。ASTGOT)優位なASTALTGPT)の上昇が特徴的といえます。また、アルコール性肝障害の病態の特徴の1つとしていえることは、その病態が極めて重篤(じゅうとく)でない限り、禁酒によって速やかに改善がみられることです。
【標準治療 】
 アルコール性肝障害の治療において、病型の共通の治療として最も重要なことは発現要因の排除、すなわち断酒につきます。後は、それぞれの病態にあった治療を行います。
【生活上の注意/予防 】
 肝障害をきたすアルコールの危険量は、男性では日本酒にして1日平均6合、安全量は3合といわれていますが、これでも多いと思います。1日1合、1週間に数回の“休肝日”をとるのがいいでしょう。とくに、C型肝炎ウイルス(HCV)陽性といわれている人は、禁酒すべきでしょう。
このページの執筆医師【寺下史朗

【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)