全辞書一括検索 JLogos

疾患解説

トップ各診療科から検索消化器

食道ガン【しょくどうがん】
Esophageal Carcinoma

[受診科] 消化器
受診のコツ

【概説 】
 食道は咽頭から下の頸部食道、胸の中の胸部食道、みぞおちから胃までの腹部食道に大別されます。この食道に発生するのが食道ガンです。まだ原因ははっきりと解明されていませんが、男性に多く、お酒を多く飲む人(とくに濃い酒、ウイスキーや焼酎の原酒など)、また最近の研究で本来、お酒の弱い人がお酒をよく飲むようになったことでなりやすいといわれています。喫煙も食道ガンの危険因子です。ほとんどは扁平上皮ガン(食道の粘膜からできるガン)で胸部食道に多く発生します。
 近年では欧米のように腺ガン(食道粘膜が円柱上皮化して発生)も増えてきました。これは下部食道に好発します。いずれも初期の段階では症状が出づらく、嚥下障害や疼痛(とうつう)などの症状があった場合には進行していることも少なくありません。したがって検診などによって早期に発見することが重要です。
【症状 】
 早期の場合には無症状または嚥下時の違和感ぐらいです。病状が進むと嚥下困難(食事の通過障害)や嚥下時痛が起こってきます。これに伴い食事量が減少し、栄養障害となり体重減少をきたします。時には食事に関係なく胸痛が起こったり、ひどい場合には吐血や下血(げけつ:便が黒くなる)、喀血(かっけつ)したりすることもあります。
【診断 】
 早期の場合は、内視鏡検査で発見されます。やや進行したものは食道透視でも発見可能です。病状の進行度を診るためには、CTやMRIが必要です。状況によっては超音波内視鏡(内視鏡の先端に超音波装置のついたもの)などで深達度(ガンの深さ)や周囲臓器への浸潤、周囲リンパ節の腫大などを検査することもあります。
【標準治療 】
 検診で無症状のうちに発見される小さな早期の食道ガンの多くは、内視鏡で切除可能になってきました。体力的にも経済的にも負担が大きく、治療後に後遺症が残る手術とは雲泥の差です。内視鏡的切除の専門医のいる病院で相談するとよいでしょう。ちなみに、NTT東日本関東病院の消化器内科には、内視鏡的切除のスタッフがそろっています。それ以上になると手術的に切除します。標準的には右の胸を開けて(開胸)食道を切除します。切除した後は胃を用いて再建します(右開胸開腹食道亜全摘、胃管再建)。最近では開胸せずに胸腔鏡を用いて食道を切除することも可能です。手術後に病状の進行度によって再発予防の抗ガン剤治療をすることになります。ガンが切除できないぐらい進行した場合や患者さんの体力が手術に耐えられないと判断した場合には、放射線治療と抗ガン剤治療を行います。
【予後 】
 食道ガンの予後は発見時の進行度によって大きく影響されます。当院での成績(5年生存率)ではstage0―100%、stageI―90%、stageII―70%、stageIII―50%、stageIV―は10%です。全国の統計と大きな違いはないと思います。この結果からも早期発見がとくに重要なことがわかります。
【生活上の注意/予防 】
 食道ガンの手術後にはときに吻合部(食道と胃のつなぎめ)狭窄による通過障害が起きます。この場合には内視鏡によって拡張し治療します。また逆流性食道炎による胸焼けが起きた場合には内服薬で治療します。とくに重要なことは、ガンの再発の早期発見治療です。再発部位や程度によって様々ですが、放射線や抗ガン剤によって治療することも可能です。したがって術後、長期の通院と綿密な再発チェックのための検査が必要となります。主治医とよく相談してフォローを受ける必要があります。
 また、予防としては、熱い食べ物や刺激物、濃いお酒と喫煙に注意が必要です。しかし何度も書きますが、食道ガンの予後は進行度によって決まります。早期発見が重要ですので、症状が軽いうちに、仮に症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。また食道ガンの診断、治療には経験が重要ですので、信頼できる専門医に診てもらうことも重要なポイントと思います。
【特殊治療 】
 食道ガンの手術は侵襲(身体の負担)が大きく、今までは手術後1カ月ぐらいの入院が必要でした。しかし、最近では手術方法の改良や術後管理の進歩によって成績がたいへん良くなっています。これに伴いクリニカルパス(治療の標準化、行程表)が導入され、在院日数も大幅に短縮しています。NTT東日本関東病院外科では術後15日で退院するクリニカルパスを導入し、良好な成績をおさめています。また、2006年1月より食道ガン切除術にも電子カルテ版パスを導入して、ミスのない安全な治療・看護を行っています。
このページの執筆医師【奈良智之 小西敏郎

【関連コラム】
胸腔鏡下手術
内視鏡(カメラ/ファイバースコープ)
ガンの放射線治療

【出典】 寺下謙三/日本医療企画
標準治療(第3版)