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石けんと合成洗剤
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雑学科学読本 身のまわりのモノの技術生活で使うモノの技術 >

普段、何気なく使っている石けんだが、どうして石けんは汚れを落とせるのだろう。その秘密は分子(ぶんし)の不思議な構造にある。石けんの分子は、マッチ棒のような形をしている。その分子の片方は水に反発し、もう片方は水になじむ性質がある。水に反発する側を疎水基(そすいき)、水となじむ側を親水基(しんすいき)と呼ぶが、この二つの基が共存する分子構造が重要なのである。石けんの分子は水中でミセルと呼ばれる分子の集団になっている。疎水基が水と反発するため、親水基を外側にして集まるのだ。「頭隠して尻(しり)隠さず」という言葉があるが、石けんの分子はまさにその状態になっている。もっとも、図で表現するときには疎水基を棒、親水基を丸で表現するので、「尻隠して頭隠さず」となるが……。ここに油を入れてかき回すと、どうなるだろう。ミセルを形作っていた石けん分子はバラバラになるが、ふたたび疎水基の隠れ場所を探そうとする。この新たな隠れ場所が、水に溶けない油である。油も疎水性なのだ。石けん分子の疎水基は、親しい関係にある油の表面を取り囲む。油は石けん分子にびっしりと覆われるが、外側は親水基。つまり、水に溶けるのだ。油が水に溶け出す秘密はここにある(これを乳化(にゅうか)という)。水ですすげば、油が洗い落とせることになる。以上が石けんで油汚れが落ちるしくみである。親水基と疎水基が両端(りょうたん)に並んでいる分子構造が本質的な意味を持つ。この構造を持つことで、石けんは油汚れを落とせるのである。石けん分子のように、親水基と疎水基をあわせ持つ分子からできた物質を、界面(かいめん)活性剤という。石けんは植物油脂から作られるが、分子構造が判明している現在、これを石油から化学的に合成することができる。それが合成洗剤だ。また、洗剤以外にも、界面活性剤は静電(せいでん)防止剤や柔軟(じゅうなん)剤など、生活のさまざまなところで利用されている。


中経出版
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
JLogosID : 14820744


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【この辞典の書籍版説明】

「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」涌井良幸・涌井貞美

身のまわりの「便利なモノ」にはすべて、「便利さの理由」があります。でも、私たちはそれをよく知らないまま、日々生活していることがほとんどではないでしょうか。本書は、家電からハイテク機器、身近な家庭用品まで、私たちが日頃よく使うモノに関する素朴な疑問を図解で解説。「モノ=科学技術の結晶」たる所以がこれでわかります

出版社: 雑学科学読本 身のまわりのモノの技術[link]
編集: 涌井良幸・涌井貞美
価格:648円+税
収録数:
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発売日:
ISBN: 978-4-8061-4455-7