歩行者天国①
【ほこうしゃてんごく】
【道と路がわかる事典】 4章 道の由来と文化 >
車の走っていなかった時代は、すべての道路が歩道、今でいう歩行者天国のようなものだった。歩行者天国が生まれたのは、わが国にモータリゼーションが始まって、道路に車があふれるようになってからのことである。
交通事故が多発し、騒音や廃気ガスで環境も悪化、のんびり街を歩くこともできない。歩行者はおろか、路面電車までもが邪魔者扱いされて、道路はすっかり車に占領されてしまった。そうしたなか、道路から車を締め出して、歩行者に開放しようではないかという発想から生まれたのが歩行者天国だ。一九七〇(昭和四五)年、東京の銀座、新宿、池袋、浅草で始められたのが日本で最初である。神戸や尼崎、姫路などでもほぼ同時に実現している。
歩行者天国では、今まで車に脅かされ続けてきた歩行者が、一気にストレスを発散するかのように道路のド真ん中を闊歩し、どこも大変な盛況ぶりであった。特に銀座は、交通量の激しい国道から車を締め出すとあって、普段の一〇倍もの人出で賑わった。また、実施されたのが八月二日(日曜)、真夏の炎天下だったということもあり、道路には植木が並び、ビーチパラソルやビニール製のプールまでが登場。道路の真ん中に座り込んで弁当を広げるという、平常では考えられないような光景があちこちで展開された。
歩行者天国が実施された道路では一酸化炭素が激減。騒音も大幅に減少し、環境によいことも実証された。歩行者天国の成功は大きな話題となり、全国の都市に急速に広まっていった。しかし、その後種々の問題が発生し、廃止に追い込まれた歩行者天国も少なくなかった。
歩行者天国はおもに日曜日に実施されることから、日曜遊歩道ともいわれる。
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【この辞典の書籍版説明】
「道と路がわかる事典」浅井 建爾 |
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道を切り口に日本を旅する楽しみに出会う本。身の回りの生活道路の不思議から、古道の歴史、国道や高速道路、橋やトンネル、乗り物まで道と路に関する知識が満載。 |
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