トリコモナス膣炎
【とりこもなすちつえん】
【標準治療】 コラム > 婦人科
トリコモナス膣炎はトリコモナス原虫の感染によって起こる膣炎です。原虫は単細胞の生物ですが、トリコモナス原虫には鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛が生えていて、振動するような鞭毛の動きによって活発に運動します。一般には性行為によって感染すると考えられますが、トリコモナス原虫は水分があるところであればどこでも生き残っている可能性があり、浴槽や便器を介しての接触によっても感染する可能性がると考えられています。
自覚症状は強いかゆみと悪臭のある帯下(たいげ)(おりもの)です。淡黄緑色~灰色で、泡沫状と表現される泡立った帯下が特徴です。潜伏期間は、性交後5日~半年程度と考えられています。診察すると、膣粘膜に点状の発赤があり、特徴的な帯下の状態と合わせて、視診だけでも診断がおよそ可能です。トリコモナス原虫の大きさは10~40μmで、診察室に備えてある普通の光学顕微鏡で見ることができますので、帯下を顕微鏡で直接見れば確定診断も容易です。
治療は、メトロニダゾール(フラジール)またはチニダゾール(ハイシジン)の内服と膣錠です。膣だけではなく尿路や直腸の感染も同時に起こっている可能性があるため、膣錠の治療だけでは不十分です。内服薬と膣錠を併用します。また、セックスパートナーも同時に治療する必要があります。これらの薬剤は胎盤を通過して胎児に移行するため、妊娠中の女性では内服薬はさける必要があります。胎児への影響が少なくなる妊娠中後期での内服は安全であると考えられています。飲酒によって腹痛、嘔吐などの症状が出る場合があるため、治療中は飲酒をさけるべきです。
●処方
フラジール錠(250mg) 1回250mg、1日2回、10日間 内服
フラジール膣錠(250mg) 1回250mg、1日1回、10日間 膣内挿入
または
ハイシジン錠(200mg) 1回200mg、1日2回、7日間 内服
ハイシジン膣錠(200mg) 1回200mg、1日1回、7日間 膣内挿入
性感染症一般にいえることですが、特効薬がありながらも、治療が中途半端になって治らない場合が多々あります。ハイシジン錠には1錠500mgの錠剤があり、4錠(2,000mg)をまとめて1回で内服して治療終了という方法もあります。 (片瀬功芳)
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【この辞典の書籍版説明】
「標準治療」寺下 謙三 |
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約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。 |
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