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皮膚ガン(有棘細胞ガン、基底細胞ガン等)
【ひふがん(ゆうきょくさいぼうがん、きていさいぼうがんとう)】

標準治療病名 > 皮膚科

 皮膚ガンと一口にいってもその中には数十種類のものが含まれます。皮膚を構成する多くの種類の細胞それぞれからできた悪性腫瘍(しゅよう)はそれだけでも種類が異なりますし、さらにその中で悪性度などの性質により分類がなされます。また、ガンは正確には上皮系の悪性腫瘍、肉腫は非上皮系の悪性腫瘍を指しますが、ガンという言葉で悪性腫瘍全体を指している場合もあります。ここでは、皮膚ガンの中で代表的な有棘細胞ガン(squamous cell carcinoma)、基底細胞ガン(basal cell carcinoma)、外陰部パジェット病(genital Paget's disease)について述べます。
 有棘細胞ガンは、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)にできる皮膚ガンです。基底細胞ガンは角化細胞と毛包細胞が分かれる前の細胞が悪性化したものです。パジェット病は、乳房パジェット病と乳房外パジェット病(多くは外陰部パジェット病)に分けられます。乳房パジェット病は乳ガンの一型で、外陰部パジェット病は汗腺と関係のある悪性腫瘍です。
 この中で、基底細胞ガンはガンとしてはやや変わった性質をもっています。ガンが良性腫瘍と異なる点は、局所の増殖の仕方もありますが、決定的に異なるのは転移を起こすかどうかという点です。ところが基底細胞ガンは局所ではどんどん破壊的に増殖するにもかかわらず、転移は極めてまれという性質をもっています。そのため昔は良性と悪性の中間という意味で基底細胞上皮腫と呼ばれていました。しかし、現在では局所的な悪性腫瘍であることは間違いないので、基底細胞ガンという名称を使うことが多くなっています。
 また、外陰部パジェット病を知るためには、前ガン病変という言葉の意味を理解しておく必要があります。前ガン病変とは、狭い意味では細胞がすでにガン化しているが表皮にたまっている状態、すなわち表皮内ガンを指します。表皮内ガンも、ある時期から表皮の下のバリアである基底膜を破って下方に増殖し、浸潤ガンとなります。したがって前ガン病変という言葉の中のガンとは、浸潤ガンを意味することがわかると思います。外陰部パジェット病も長い間表皮内ガンとして存在したあと浸潤ガンになっていきます。浸潤ガンになったパジェット病のことを特別にパジェットガンと呼ぶことがあります。一方、有棘細胞ガンの表皮内ガンとして、ボーエン病と日光角化症があります。これらも、時期がくるとしばしば浸潤ガン、この場合は有棘細胞ガンになります。


寺下医学事務所
「標準治療」
JLogosID : 14820744


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【この辞典の書籍版説明】

「標準治療」寺下 謙三

約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。

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編集: 寺下 謙三
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収録数: 1787疾患1565
サイズ: 21.8x15.6x6.6cm
発売日: 2006年7月
ISBN: 978-4890417162