急速進行性糸球体腎炎
【きゅうそくしんこうせいしきゅうたいじんえん】
【標準治療】 病名 > 腎・尿路・泌尿器
急速進行性糸球体腎炎とは、急に腎臓の炎症が発症して、その病状が非常に急速に悪化する病気です。急速進行性糸球体腎炎の原因となる疾患としては、後であげるようにいろいろなものがあるので、この病名も、それらの多くの病気によって起こってくる同じような症状や所見をまとめてグループにした、いわゆる疾患群、症候群としての呼び方です。
治療を行わなかった場合、数週間~数カ月の間に末期腎不全に至ってしまいます。また、急速進行性糸球体腎炎を発症した腎臓の糸球体というところを顕微鏡でみると、半数以上の例で、半月体と呼ばれる病理組織学的所見が認められます。そのため、急速進行性糸球体腎炎のことを、半月体形成性腎炎という名前で呼ぶこともあります。
●原因疾患の分類
慢性腎炎、急性腎炎、ネフローゼ症候群などと同様に、腎臓に免疫的な異常が起きることがきっかけになると考えられています。いってみればそれらの腎臓病を起こす原因となる病気のいくつかでは、時に急速進行性糸球体腎炎の経過をたどることがあるということです。詳しくは不明なところも多いのですが、同じ腎臓病でも免疫異常から炎症を起こすメカニズムが強く働いた時に急速進行性糸球体腎炎の経過をたどると思われます。以下に、原因となる疾患の分類を説明します。
1)腎臓そのものの病気として発症するもの(原発性あるいは特発性急速進行性糸球体腎炎)
急速進行性糸球体腎炎を発症している腎臓の組織を顕微鏡でみた時の、病理組織学的な所見で、どのようなタイプの免疫メカニズムが働いているかに違いが表れます。その中でもとくに多いことが最近わかってきた重要なものは、病理組織では免疫異常の所見に乏しいタイプのものです。そのタイプでは血液を調べると、抗好中球細胞質抗体(ANCA=アンカと呼ばれる)という抗体が認められます。最近ANCAを血液検査で比較的簡単に測定できるようになったために、ANCAに関連した急速進行性糸球体腎炎が多い事実が次第に明らかになってきました。
2)感染後腎炎に伴って発症するもの
溶連(ようれん)菌感染などの感染後急性腎炎が、急速進行性糸球体腎炎の経過をたどることがあるというものです。
3)全身性疾患に伴って発症するもの
全身性エリテマトーデス、紫斑病、肺と腎臓に病変が起こるグッドパスチャー症候群など、そして悪性腫瘍に伴うものなどが主に知られています。もう1つ重要なのは全身性血管炎に伴うもので、上に記載したANCAと呼ばれる抗体を認めます。全身性血管炎がとくに腎臓に現れたものが、ANCA関連の原発性急速進行性糸球体腎炎であると考えられています。
4)薬剤アレルギーの一種として発症するもの
急速進行性糸球体腎炎を起こす原因となりうる薬剤はいくつか知られていますが、薬剤性の急速進行性糸球体腎炎を起こすのは極めてまれなので、必要な薬を内服する場合に、この病気の発症をおそれて内服をためらう必要は全くありません。
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【この辞典の書籍版説明】
「標準治療」寺下 謙三 |
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約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。 |
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