定位放射線治療
【ていいほうしゃせんちりょう】
【標準治療】 病名 > 放射線科
定位放射線治療とは、治療の対象とする病巣に対して、放射線を集中的に照射する放射線治療の一種です。一般的な放射線治療では、腫瘍(しゅよう)などの病変部のみならず、その周囲の正常組織も含めて照射することになります。例えば脳腫瘍の場合には、脳全体、あるいは腫瘍とその周囲の脳組織の両方を含む範囲に対して照射を行います。一方、定位放射線治療の場合には、放射線が照射される範囲を病変部のみに絞り込み、その周囲の正常組織にはできるだけ放射線が当たらないようにします。つまり、腫瘍に対する治療効果を確保しながらも、周囲の正常組織への放射線の悪影響を最小限に抑えようという考え方に基づいた治療方法が、定位放射線治療なのです。定位放射線治療における治療(照射)の回数は、一般的な放射線治療よりも少ないことが多く、通常、1回ないし数回で完了します。
定位放射線治療の元祖ともいえる存在なのが、脳腫瘍などの頭蓋内病変に対する治療装置であるガンマナイフ(エレクタ社)です。その原理は、約200本の放射線(ガンマ線)のビームを1点(焦点)に集中させ、病変部をちょうどその焦点に位置させることによって、きわめて正確かつ集中的に照射を行うことを可能にしています(図「ガンマナイフの原理」参照)。1本1本のガンマ線は弱いので、脳組織を貫通してもその影響は小さいのですが、病変部には約200本のビームが集中して照射されるため、強力な放射線が照射されます。照射の範囲をナイフでえぐるように鋭く決めることができ、「まるでガンマ線のメス(ナイフ)のようだ」ということからガンマナイフと名付けられました。ガンマナイフの原理は、1960年代にすでに考案されていましたが、MRIなどの画像診断装置の進歩によって病巣の立体的な位置関係を正確に把握することが可能になった1990年代に実用的なものとなり広く普及するようになりました。現在では、国内で約50台のガンマナイフが稼働しています。
ガンマナイフに始まった定位放射線治療の歴史は、その後、サイバーナイフ(アキュレイ社)、ノバリス(ブレインラボ社)、トモセラピー(トモセラピー社)などの新たな治療装置の開発につながりました。これらの装置では頭部以外(体幹部)への治療が可能となっており、現在、一部の肺ガンや肝ガンなどに対して健康保険が適応となっています。
以下の項では、代表的な定位放射線治療のひとつであるガンマナイフ治療に焦点を絞って説明していきます。
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【この辞典の書籍版説明】
「標準治療」寺下 謙三 |
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約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。 |
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