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鼠径ヘルニア(日帰り手術)
【そけいへるにあ(ひがえりしゅじゅつ)】

標準治療病名 > 話題の疾患

 最近、医療技術の進歩に伴い、入院をせずに治療を行う日帰り手術が注目されています。日帰り手術のメリットは、入院による時間的拘束の大幅な短縮、精神的・肉体的負担の軽減に加えて、経済面でも入院に比べて少ない費用で済みます。また、体の負担を最小限にした手術であるため治癒が早く、日常生活、仕事のへの復帰が早まる点があげられます。
 日帰り手術が可能な疾患としては、痔の手術、体外衝撃破砕療法(腎結石など)、内視鏡的ポリープ切除術、白内障手術、腹腔鏡による(胆石・胆嚢ポリープ等)手術(実際には、一晩入院のことが多い)などがあげられますが、その中でも代表的な鼠径ヘルニアについてご紹介いたします。
 「ヘルニア」とは、体の壁の構造に異常を生じて、体の中のものが脱出してくる状態をいいます。その結果、体表面などに膨らんだ所見を現してくることになります。その状態が鼠径(そけい)部(股の付け根)に生じると、「鼠径ヘルニア」ということになります。鼠径部は、お腹の壁(腹壁)が大腿部へ移行していく部位で、筋膜構造の弱い部分が構造的に存在します。2足歩行をする人間では、腹圧が最もかかる場所でもあり、成人の鼠径ヘルニアは、そのために発生してくるともいえます(小児の場合は、先天的〈生まれつき〉要素が原因と考えられています)。
 その筋膜構造の弱いところが、ヘルニアの出口(ヘルニア門)となります。お腹の中の臓器が、お腹の膜(腹膜)をかぶって出てくることになります(ヘルニアサック)。出てくる臓器は、大網(たいもう:胃や大腸に付着する脂肪組織)や腸管(小腸、大腸)であることが多く、ヘルニアが大きくなれば、腸管が出たり入ったりするようになります。そのために一昔前は「脱腸」といわれたわけです。
 小児期の鼠径ヘルニアは、生まれつき(先天的)のものがほとんどです。母親の胎内で鼠径部の構造ができる時に、引っ込むべき腹膜の出っ張りが、いわば置き去りになったままで、ヘルニアサックになってしまう場合です。それに対して、成人の鼠径ヘルニアは、鼠径部の構造の弱みを突いて出てくるといえます。ですから、ある程度の年齢(40歳代、50歳代以降)から発生頻度が多くなります。また、男性のほうが鼠径部に構造的な弱点を持っているので、成人鼠径ヘルニアの大部分(90%以上)は男性の方です。
 つまり、鼠径ヘルニアは、人類が存在する限り、なくならない病気といえます。


寺下医学事務所
「標準治療」
JLogosID : 14820744


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【この辞典の書籍版説明】

「標準治療」寺下 謙三

約570の病気の情報 (症状、診断方法、標準的な治療方法、予後、生活上の注意など)を診療科目別に掲載している 「家庭の医学事典」です。

出版社: 標準治療[link]
編集: 寺下 謙三
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収録数: 1787疾患1565
サイズ: 21.8x15.6x6.6cm
発売日: 2006年7月
ISBN: 978-4890417162