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ソクラテス
【東京雑学研究会編】

雑学大全ヒトの不思議 > 人物

ソクラテスは古代アテネの哲学者で、後年はもっぱら人間の問題についての研究を行い、アテネの路上や競技場などで対話や問答をすることによって真理を究明しようとした。
ソクラテスの人格とユーモアあふれる鋭い論法に心酔した人々が彼を中心に集まってサークルを形成した。
ソクラテスは、当時、隆盛を誇っていたソフィストの提唱していた「徳」や「知」の意味を抜本的に問い直し、「徳は知」であることの追求が「よく生きる」こと、つまり「幸福である」ために心掛けることだとした。
当時、知者とされていた人々は「何も知らないのに知っていると思い込んでいる」のに対して、ソクラテスは自分の無知を自覚している「無知の知」に気付き、すべての人間に「無知の知」をさとらせることが自分の使命と考えた。
けれども、こういった彼の運動が不敬神の罪で告発され、前三九九年、裁判の結果、死刑の判決を受けた。
ソクラテスの最期の様子は弟子・プラトンが著作『ファイドン』の最後の章に次のように書き残している。
ソクラテスは歩き回っていましたが、やがて足が重くなったといって、仰向けに身体を横たえました。そうするように言われていたからです。それとともに、毒を手渡した男は、あの方の身体に触ってみて、やや時をおいてから、足の下から上の方を調べていましたが、その後で足を強く圧して、感覚があるかどうかをたずねました。……そのようにしてだんだんと、上の方に移っていきながら、次第に冷たく固くなりつつあることを私たちに示しました。……これが心臓まできたら、この世を去るのだと教えました」「少し後で、身体がびくりと動き、係の男が被いをのけてみると、その目は固くすわっていました」(保刈成男著『毒薬』雪華社、一九六三年)
ソクラテスは毒ニンジンの入った毒杯で処刑された。これはヨーロッパ各地に自生するセリ科の植物で「コニイン」という致死量七五ミリグラムの猛毒だ。神経性の毒で、中枢神経運動神経をまひさせる。これを飲むと手足の末端から身体の中心に向かってまひが進むのが特徴だ。
古代ギリシアでは毒ニンジンを陰干しにして粉末を作り、水あるいはぬるま湯でエキスにするか、粉末を水に混ぜるかしてもちいられたという。
アテネの政治家のデモステネスもマケドニアとの戦争に敗れて自殺したときにこの毒を使ったと伝えられている。


東京書籍
「雑学大全」
JLogosID : 14820744


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編集: 東京雑学研究会
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発売日: 2004年8月
ISBN: 978-4487799473