発情期
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 ヒトの不思議 > 男と女
発情期のはっきりしたサルと比べて、「裸のサル(ヒト)」には、発情期がなくなったと言われる。サルの場合は、排卵に先立つ一週間ほどの間は、卵巣ホルモンの大量分泌とともに交尾が盛んに行われる時期である。そして、メスの魅力も受容性・積極性ともにピークに達するという。この状態が「発情」と定義されている。
一方、ヒトの場合は、排卵前後に、わずかに積極性が増す以外、魅力や受容性の面に大きな違いは見られない。そこで発情期はなくなったと言われるのだが、その結果、ヒトの性のあり方は、どのように変わっていったのか?
発情期がなくなり、ヒトはいつでもセックスができるようになった。しかも、排卵時期が少なくとも表面的にはわからなくなった。その結果、メスをめぐるオス同士の争いに巻き込まれることがなくなり、ペア以外のオスに子どもを殺されることもなくなった。また、ペアのオス以外の優秀なオスの子どもを産むことができるようになった……という説がある。
サルのように年に一度の交尾ではなく、ヒトの場合はセックスが日常化した、言い換えれば、ヒトの性行動がホルモンの支配から脱却してしまったのである。脳が進化したことで、ヒトの性行動は生殖からはなれ、社会的な意味と結びつくようになった。
一説によると、それは「愛」であり、特定の異性を独占したいという「欲望」であるという。そこで、ヒトの性行動は、生殖活動より前戯が長くなり、乳房や身体への愛撫やキスが重要になってきたという。生殖年齢を過ぎた高齢者の性も重視されるようになった。スキンシップや男女のペアシップで、病気の治りも早くなると医者は言う。
発情期から自由になった最大の動機は、「快感」と言い切る意見もある。大脳新皮質が発達した結果、ヒトはエクスタシーを得、生殖と性を切り離した。これを、本能が壊れたと見るのではなく、音楽や絵画、科学の発達と同じく大脳の勝利と見るのである。その先には、性というより、宇宙と合一する究極の「生」のエクスタシーがあるという。
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【この辞典の書籍版説明】
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