バッカス
【東京雑学研究会編】
【雑学大全】 そーだったんだ! > フィクション
宇宙の創生や神々の誕生を記した「ギリシア神話」には、とうぜんのことながら、さまざまな神が登場する。では、中でもユニークな酒の神「バッカス」とは、一体どんな神なのか。酒好きの「酔っぱらいの神」なんてことはないと思うが。
実は本家ギリシア神話では「ディオニソス」という。「バッカス」はローマ神話での名前だ。小アジアのリュディア語に由来する「バッコス」の異名があり、ローマ神話ではこちらを使って「バックス」と呼ぶ。その英語読みが「バッカス」なのだ。
そしてこのディオニソスは、そうとう数奇な運命の持ち主だった。
父のゼウスと母のセメレは、不倫の関係にあった。ゼウスの本妻ヘラは、セメレがゼウスの子を宿したことに嫉妬し、セメレを焼き殺してしまう。その直後、ゼウスがセメレの胎内から取り出した赤ちゃんがディオニソスなのだ。誕生からして、波乱な幕開けではないか。
母のいない彼は、すぐさま里子にだされる。しかし、ヘラの妨害にあい、里親が発狂。ゼウスはディオニソスを妖精たちに養育させる。成長後、彼はブドウの木を発見し、ブドウ酒の製法を知る。彼はヘラに狂わせられながら、エジプトとシリアをさまよった末、大母神キュベレに狂気を癒される。
やがて彼は信者をつれてギリシアへたどりつく。各地で妨害を受けたが、ギリシアの村人たちは、彼を神とあがめた。ディオニソスは村人たちに秘伝というべきブドウ酒のつくり方を教えた。こうして、彼は「ワインの神」となったわけだ。
「ワインの神」は、もともと特定の地方で樹木や果樹の精霊としてあがめられていたものが神格化したもの。ディオニソスは、ギリシア最古のブドウ栽培地の一つと伝えられるアッティカ地方北西部の小村に、ささやかな社を献じられていたという。
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