21世紀の資本(ピケティ著)
【にじゅういっせいきのしほん】
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フランス人経済学者、トマ・ピケティによる経済書。2015年1月時点で、世界10数カ国で翻訳刊行され累計100万部を突破している。原著は2013年9月母国フランスで、2014年4月には英訳版が米国で、また2014年12月邦訳版がみすず書房から発売された。
著者のピケティ氏はフランス社会ではよく知られた知識人、またその研究はオバマ政権にもある程度影響を与えていて、政治の世界や経済学者の間である程度知られていたが、英訳版の本が出ることにより一般の人々の注目を浴び、世界的な「ピケティ現象」が沸き起こるきっかけとなった。
1年半で書き上げられたこの書籍はただし、15年を超える活動と世界的なネットワークによるデータの裏付けに依拠している。その意味で極めて専門的な内容でありながら、90年代以降に漠然と先進各国の市民が感じていた閉塞感に理論的な根拠を与えることとなり、爆発的な「ピケティ現象」となった。
米国クリントン政権で財務長官を務め、ハーバード大学総長になったことがあるローレンス・サマーズ氏は、「この統計データだけで、ノーベル賞に値する」と述べている(広瀬英治「『21世紀の資本論』が米国で読まれる理由』」、『中央公論』第129巻第8号、中央公論新社、2014年8月)。
しかもそのデータは、サイトWTID(The World Top Incomes Database)上で一般に公開されてもいる。
20世紀、ノーベル経済学者クズネッツは当時の経済学界の中で理論と同時にデータをも重視、米国の35年間(1913年~1948年)のデータを分析し、後に「クズネッツの(逆U字型曲線)仮説」と呼ばれる学説を唱えた(『所得と貯蓄における高所得グループの比率』)。それは経済が発展していく初期において格差は一旦拡大するかもしれないが、その次の段階で「経済成長が格差を解消する方向に働く」というものだった。
戦後の先進国は、また途上国を指導するIMF、OECD、世界銀行もこの「成長が最終的には格差を解消する方向に作用する」という考え方をベースに経済を運営してきたとされている。
ところがピケティがクズネッツに倣いデータ整備を重視、データを前後に時間軸で引き伸ばし(二度の世界大戦の時期、35年間から3世紀にわたる約200年間)、さらに左右に空間として多数の国に広げたところ、そこから出てきた結論は異なっていた。
資本の運動を野放図にしていると格差は広がるばかりだ、というのが結論だっのだ。
【寄稿:詩想舎・神宮司信也】
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