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ソフトバンク大型買収
【そふとばんくおおがたばいしゅう】

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(概要)
 2012年10月表面化した国内携帯電話3位のソフトバンクによる国内外の同業他社の大型買収。
 同月2日には、国内4位のイー・アクセスの株式を約1,800億円で取得し、完全子会社化することを発表。イー・アクセスの買収でグループの契約数は約3,427万件(12年8月末)と2位KDDIの3,588万件に肉迫。連結売上高見通しも単純合算で3兆6,000億円となり、KDDIの3兆5,800億円を抜く可能性が出ている。
 さらに同月12日には、米3位のスプリント・ネクステルの買収協議に入ったことを表明。米5位のメトロPCSコミュニケーションズの買収検討も報じられており、総額で2兆円規模の大型買収が実現すれば、日本企業の海外企業の買収としては過去最大規模となる。

(解説)
 ソフトバンクが大型合併に舵を切り始めた背景は、スマートフォンの普及だ。データ通信量が膨大化し、国内通信各社間では「電波の争奪戦」(12年10月2日・日本経済新聞)の様相を呈している。
 周波数でドコモ、KDDIに劣る同社は12年7月から、新たに取得した周波数プラチナバンド」のサービスを開始したものの、「つながりにくい」というユーザーの不満が絶えず通信網の拡大は死活問題だった。イー・アクセスの買収により、ソフトバンクが保有していない1.7ギガ・ヘルツ帯を使ったサービスが可能になる。この周波帯は、アップル社が最新スマホiPhone5」の世界標準としており、新しい高速通信規格「LTE」にも対応したサービスを今後広げていくことが可能になる。

 また、LTEは巨額の設備投資をする必要がある一方で、規格は世界的に統一されている。海外で同様のサービスを展開する企業を統合すれば、設備投資を抑え、通信網を拡大しやすい。ソフトバンクスプリントの買収を目指し、メトロ買収をも視野に入れるのは、こうした事情がある。近年の円高も大型買収を後押ししており、ソフトバンクが両社を総額2兆円規模で買収できた場合は、日本たばこ産業(JT)が07年に英ガラハーを約1兆8,000億円で買収したケースを上回って過去最高規模の海外企業買収案件となる。

 ソフトバンクの大型買収は話題性がある反面、懸案も多い。スプリント買収が報じられた直後の12年10月12日には投資家が巨額投資を嫌い、同社株の売りが先行。株価は17%急落した。大手銀3行が「1兆5千億円規模を協調融資する方向」(12年10月13日・朝日新聞)で支える見通しとはいえ、国際的な通信会社の経営統合は元々難しく、相乗効果を打ち出せるか不透明な部分もある。
 また、イー・アクセスの買収を巡っては、総務省の審査システムとの関連で厳しい論評もある。総務省は、携帯各社に電波を平等に割り当て一定の規制下で競争させる政策を取ってきたが、ソフトバンクは、審査を通過した後にイー・アクセス割り当てられていた周波数買い取る形になった。日本経済新聞は「総務省が翻弄されている」という論評にとどめたが(12年10月13日朝刊)、オークション方式で電波割り当てをすれば、国に新たな財源を生んだとの指摘もある。経済ジャーナリストの町田徹氏は、「膨大な国庫収入を生むプラチナバンドを無償で割り当てにもかかわらず、半年も経たずに、転売という錬金術に使われる結果になった」(12年10月9日現代ビジネス)と手厳しく評している。


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